英雄の一大叙事詩を書き続ける田中芳樹氏の昭和SF小説の隠れた名作「タイタニア」

小説家──田中芳樹氏。

代表作には大宇宙を題材にした銀河英雄伝説から、亡国の王子が真の王となる物語アルスラーン戦記などを手掛ける御大です。

そんな彼氏が1988年に手掛けた知られざる名作が存在します。

その名前は「タイタニア」と言う作品です。

舞台となる世界は人類が地球から広大な宇宙へと進出し、幾つもの星間国家が築かれた星暦となった遥か未来の時代。
宇宙の星々を統べるタイタニア一族の支配下にあった星暦446年。
宇宙都市国家エウリヤは、タイタニアとの権益問題により侵攻を許してしまうも、エウリヤはタイタニアの撃退に成功する。

この敗北を皮切りにタイタニアは覇権を喪失し、やがて星間同士の内紛が勃発。

たった一つの敗北がタイタニアの絶対支配を消失させてしまい、後の世に星同士が宇宙の覇権を争う「大空位時代(ザマーナ・マサフィン)」と呼ばれる、闘争の時代を迎える事に事となる……

……と、銀河英雄伝説とは違い、別の形で星同士で覇権を争い迎えた未来を、もう一つの形で表現したスペースオペラ作品であり、巨大なる力が敗退し、他国によって衰退していく様と、それに抗い戦い続ける人々のドラマが見事に描かれた一大叙事詩です。

この作品は1988年徳間書店のトクマ・ノベルズとして発行されました。

ちょうど1988年と言えば、バブル絶世期であり、また様々なアニメや小説に漫画を問わずにSF作品が発表されていく時代でもあります。

そんなSF開拓時代に第1巻が発行され、1991年までに第3巻まで発行されましたが、田中芳樹氏の多忙により執筆は一時中断となり、その間実に20年間の時間が流れました。

そして2013年の9月に4巻が発売され、2015年にようやく最終巻となる「凄風篇」が発売され、実に27年間の時を経て「タイタニア」の物語は完結したのです。

この実に27年に及ぶ間に、スクウェア・エニックス社から再刊され、2008年にはNHKアニメ作品の放送を切っ掛けに、講談社文庫から新装版が刊行されました。

また「タイタニア」のアニメ化を皮切りに「月刊少年シリウス」で連載がスタートしました。

2008年5月号から2011年12月号まで「タイタニア」の漫画版が連載され、数多くのメディアミックスを果たした「タイタニア」の快進撃は続き、漫画版が連載された年である2008年10月からは、アニメ作品である「TYTANIA -タイタニア-」が放映されました。

翌年の2009年3月までNHK-BS2で放送され、NHK総合テレビにて2009年4月から放送されたアニメ作品の「TYTANIA -タイタニア-」。

製作陣のスタッフも豪華で、監督は代表作に「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか」と、同じ田中芳樹氏の作品である銀河英雄伝説を手掛けた石黒昇氏が起用され、「タイタニア」の世界観をシリーズ構成するのは、代表作に「さよなら絶望先生」のシリーズ構成を手掛けた実績を持つ、金巻兼一氏と、「ドラえもん のび太のワンニャン時空伝」などで脚本を手掛けた岸間信明氏が「タイタニア」の世界を演出し、キャラクター原案には「超時空世紀オーガス」で作画監督を担当し、「機動戦士ガンダム0080・ポケットの中の戦争」でキャラクターデザインを担当した美樹本晴彦氏がキャラクター原案を描き、「タイタニア」に独自の息吹を吹き込み、アニメ独特の世界観を見事に創り出しました。

そしてアニメで忘れてならないのが、オープニングテーマとエンディングテーマです。

オープニングのタイトルは、
「あの宇宙(そら)を、征け」
作詞・作曲は高取ヒデアキ氏
編曲は高木洋氏
歌は錦織健氏
曲の指揮は竹本泰蔵氏
演奏は神奈川フィルハーモニー管弦楽団と、豪華仕様となっています。
そしてエンディングテーマのタイトルは、
「LOST IN SPACE」
作詞・作曲はYOFFY氏
編曲は大石憲一郎氏
歌・演奏はサイキックラバーと、オープニングに負けず劣らない豪華仕様で、それぞれ「タイタニア」に登場するタイタニア五家族当主をオープニングにメインとして出し、エンディングには反タイタニア勢力を出すと、演出にもこだわりが入った仕上がりとなっており、放映された内容も実に全26話としっかりと作り込まれた内容で、話数も以下のようになっています。

第1話 ケルベロスの戦い
第2話 天の城(ウラニボルグ)の四公爵
第3話 英雄の条件
第4話 リラの決心
第5話 憧れと、誇りと なかの陽
第6話 シラクサ星域会戦
第7話 流星の旗のもとに
第8話 ふたつの出会い なかの陽
第9話 小さな風
第10話 エウリヤ崩壊
第11話 ヒューリックの決意
第12話エーメンタール潜入
第13話 終わりと始まり
第14話 リュテッヒの動乱
第15話 一粒の麦のごとく
第16話 反撃の烽火
第17話 高すぎた身代金
第18話 監獄衛星クロノス
第19話 ラドモーズ事件
第20話 クロノス強襲
第21話 エスタールの邂逅
第22話 野望のプレリュード
第23話 砂漠の鼠
第24話 オネストオールドマン
第25話 熱砂の激闘
第26話 終幕の鎮魂歌(レクイエム)
──と、実に内容の濃いタイトルが並び、小説に負けず劣らないアニメではありましたが、監督の石黒昇氏は「タイタニア」をもっと作り込みたかったと、その心情を語っていたらしいです。

石黒昇氏は原作小説である「タイタニア」が当時まだ未完のままでアニメ化する事に懐疑的であり、原作が完結を向かえていないのにアニメにするのは不本意であり、出来れば原作完結のしたのなら、改めて「タイタニア」をアニメ化したいと言っていましたが、本氏は2012年3月20日に死去され、73年の人生に幕を下ろし、その想いは実現できなかったとあります。

そんな様々な思いを残した作品となった「タイタニア」

アニメの声優陣も豪華で、「TYTANIA-タイタニア-」の登場人物で、反タイタニアの主人公的キャラクターである「ファン・ヒューリック」の声優を務めたのは、熱血の三枚目でも誰もが憧れるアニキ声として定評がある、代表作に「天元突破グレンラガン」のカミナ役で有名な小西克幸氏が担当し、一見いい加減にも見えるが、砲術に関しては天才的な才能を発揮する頼りがいのある英雄の一人で、不運ながらも宇宙の歴史に振り回されていく奇妙な英雄を演じています。

また敵対するタイタニアの主人公に位置しているキャラクター「ジュスラン・タイタニア」の声優には「ゾイド -ZOIDS-」の主人公「バン・フライハイト」の声を演じ、「弱虫ペダル」では「手嶋純太」の声を演じた、熱血少年からクールキャラなど様々な性格のキャラクターを演じる実力派の岸尾だいすけ氏が演じています。そんな彼が演じるタイタニア一族の宗家といえる五家族当主の一人である「ジュスラン・タイタニア」は、ヴァルダナ帝国公爵であり、軍では上将の地位にあり、政治・外交を担当しているもう一人の主人公として立ち位置にいるキャラクターです。
恵まれた生まれのせいか軍事実戦には経験不足であるも、並外れた知略と洞察力を持ち「政治のジュスラン」と呼ばれるほどの有能な人物で、またその恵まれた容姿からは「タイタニアの良識派」として知られ、動乱の時代を切り抜けていく「ファン・ヒューリック」とは対照的な人物像であり、「タイタニア」を語るには絶対に切り離せない二人を、豪華な声優二人が演じた事で、より完成された「タイタニア」となり、多くのファンを魅了した作品となっています。

スペースオペラと壮大な物語が多くの人にメディアミックスされ、小説から漫画、アニメへと移り変わっていた作品「タイタニア」

銀河英雄伝説とは違い、時代に翻弄されるも抗う人々の熱い物語を堪能したい方におススメな作品です。